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寄付は誰が行うのがいいのか?個人?企業?政府?それとも…

2011年01月13日 16:18

アメリカは寄付が盛んで、なんと年間20兆円以上に上ります。これが、福祉、文化・スポーツ、海外援助など様々な分野の活動の源泉となっています。日本の2009年度の一般会計税収が37兆円であることを考えると、いかに米国の寄付の規模が大きいか分かると思います。一方、日本の寄付金額は、アメリカの数十分の一に留まっています。(参考HP)

金額の差もさることながら、特徴的なのは寄付の主体で、アメリカは大部分が個人による寄付、一方、日本は半分以上が法人によるものです。アメリカでの経済的成功者、つまり富豪の資産は、日本と比べるべくもなく大きく、またそういった人たちが積極的に寄付を行う文化が、この差の一因だと考えられます。話題のFacebook創始者ザッカ―バーグ氏(26歳)も資産の半分以上(数千億円?)を寄付することを約束しましたね

と、ここまで話を振ってみたものの、今回は日米比較ではなく、寄付は本来どのような形で行われるのが最適なのか?、という問いについて、考えたことを書いてみます。

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①個人から慈善団体に直接寄付

個人による寄付のメリットとしては、純粋に市民の意思を反映していることです。誰かの意思で歪められたりせずに、意図した団体にお金が届きます。一方で、デメリットもあります。一般的に、個人は持っている情報や、その情報を判断する能力が限られていることが多いです。

例えば、途上国で教育事業を行っている団体があるとして、その活動がプロフェッショナルで、本当に現地の教育水準を高めることに貢献しているか、あるいは、単に文房具を配るだけで、効果が少ないばかりか、住民の依存心を高めてしまうデメリットの方が大きいのか、などの判断をきちんとした上で、一般の人が寄付をするのは難しいでしょう。寄付をする前と後に、その使途をチェックして評価することもとても重要ですが、それを理解して実践する人もまれだと思います。

このため、寄付金が本当に必要とされ、有効活用されるところに流れないリスクが高いと考えます。

②企業から慈善団体に寄付

企業の社会貢献は、CSR(企業の社会的責任)という言葉が一般的になってきたように、広く認められるところとなりました。

歴史的に日本では、企業は「社会の公器」的な役割を担ってきており、必ずしも寄付という形でなくとも、企業スポーツや文化振興の形で、社会貢献がなされてきました。アメリカでも、企業が文化活動のスポンサーとなることは広く行われており、大手企業では専門の部署とスタッフがあるのが一般的なようです。

しかし、企業、特に公開企業のこういった活動には、根本的な問題もあるように思えます。ウォーレン・バフェットも主張しているように、企業の利益は株主のものです。経営者はあくまでも株主から利益最大化を目的に経営を任されている存在なので、勝手にどこかに寄付を行ったり、会社の資金を使って慈善活動を行う権利は本来ないはずです。なのでバフェットは、寄付は個人が行うのが筋と考えています。(企業が行うにしても、経営者ではなく、株主の意思の元に行うべきということで、彼の投資会社では寄付先を株主が決定するようです)

堅いことを言うようですが、正論だと思います。イメージアップ等による利益貢献などの理由で正当化できないような、本業以外の慈善活動を行うのは、根本的な矛盾をはらんでいます

③政府や公的機関が助成金を慈善団体に交付

日本でも様々な形で政府からNGO/NPOへの助成を行っています。寄付の文化が乏しい日本で市民による社会貢献活動を活発化させるには、有効と考える人もいます。

しかし、この方法には2つの課題があると考えます。まず、公的サービスが必要なのであれば、そもそも市民団体を通さずに、政府が直接実施すべき問題なのではないか?という疑問。もう一つは、政府からの補助金をもらうことが、本来、政府・企業と並ぶ第三の存在である市民活動の独立性が脅かされるのではないか?という問題です。

確かに、なんだかすっきりしない感覚が残る方法です。

④個人が中間団体を経由して寄付

そこで、上記のデメリットを補う案として、私が注目しているのがこの方法です。

善意の寄付を、ある中間団体が集めます。その団体が、事前に提示したポリシーと、適切な判断・モニタリングにより、個別の慈善団体に寄付を配分する方法です。これにより、個人の持つデメリット(専門性、時間の制約など)を回避しつつ、(公開)企業のような根本的矛盾を避け、政府の関与も受けずに済みます

ただし、この方法は、その中間団体の信頼性が重要になります。これまでも、羽根を配る某共同募金の不透明性が指摘されてきました(個人的にも、共同募金の資金配分先の実績が、分かりやすく提示されているのを見たことがないです)。

そうではなく、寄付の提供先をきちんとチェックし、事業内容を適切に評価し、その評価に基づいて新たな寄付を配分するような団体は、存在意義があると思います。

今回、私がこのエントリを書くきっかけになったのは、(海外での活動と共に)国内で児童養護施設の資金調達支援を行っているLiving in Peaceという団体の代表のブログ記事「拝啓 全国のタイガーマスク様」です。この団体については、今回知ることとなっただけで詳しく存じ上げているわけではないのですが、寄付者にメルマガできちんと使途報告を行う点や、間接費を最低限に抑える努力をしている点(※)に好感を持ちました。(後日、このブログに追記のエントリがありました。僕も内容に同意、共感します。)

日本で、継続的な慈善団体の支援を行ってる方はまだまだ少ないと思いますが、これを機に興味を持つ人もいればと思い、いつもと少し毛色の違う内容を書いてみました。ちなみに、私はアフリカで教育支援を行っている某団体で、学部時代に現地でお手伝い、その前から今まで10年強の間、微力ながら支援をしています。

(※)これは、慈善団体だから職員もボランティアであるべき、と言っているのではありません。慈善団体(NGO/NPO)であっても、特に専門的な活動を行うのであれば、プロフェッショナルなスタッフが必要です。そして、その仕事には相応の対価が払われるべきですし、そうすることで、資金提供者(寄付者)のお金が有効活用されます。現状、まだまだ日本では慈善団体=ボランティア、のイメージが強いこともあり、スタッフの人件費は極めて低いままです。結果として優秀で意識の高い人でも、長期にわたって活躍し続けることが困難な現状になっています。

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