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起業したいなら、リスクテイクする勇気を奮い立たせるより、起業リスク耐性を高めよう

2012年03月23日 12:15

起業というのはハイリスク・ハイリターンな行為で、成功した場合の金銭的な報酬が大きい一方で、失敗した場合には多くを失ってしまう。だから、起業家は(事業の成否に関わらず)リスクを取った勇敢な人である、という風に考えている方も多いのではないでしょうか?

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[シリアル・アントレプレナーでZynga共同創業者のMark Pincus氏]

私も以前はそうでした。でも、留学してから多くの起業家の話を聞いたり、事例に触れるにつれて、考え方が変わってきました。

例えば、先日HBSのカンファレンスで講演した、有名ベンチャー・キャピタリストのアルフレッド・リンはこのように語っていました。「過度に楽観的な(overly optimistic)起業家が成功することはない。注意深く楽観的(cautiously optimistic)であることが大事」(アルフレッド・リン--有名ベンチャーキャピタリスト)

また、ドラッカーは著書でこのように言っています。「企業家として成功した人を大勢知っているが、リスク志向の人はいなかった」(P.F.ドラッカー)

もちろん起業に失敗はつきものです。事実、ベンチャー起業のほとんどは、数年でリターンを産まずに姿を消します。

しかし、起業家本人が、自分自身の将来を掛けて、例えば失敗したら路頭に迷うプレッシャーの中で起業しているかというと、そういうパターンは稀のように思います。多くの場合、事業が失敗したとしても、本人はきちんとした生活を送れるようにしているからです。

起業が失敗しても、経済的に困ったことにならない力を「起業リスク耐性」と、ここでは呼びます。私の印象では、実際に起業している人は、この起業リスク耐性が高い場合が多い、というか、ほとんどです。

起業リスク耐性を高める要素としては、以下のようなものがあります。


1. 親族の経済力

親が経済的に豊かであれば、いざとなった時に頼ることができます。また、親が事業家の場合、ベンチャーに失敗したらそれを継ぐ、という選択肢がリスクヘッジとなっているパターンも多いです。

リスク耐性とは別の話になりますが、この場合は自分のベンチャーに資金提供してもらえる可能性があるので、起業の実現性はさらに上がります。(バブソンはこのケースが結構多い印象)

2. シグナリング効果

超有名大学(例:ハーバード、スタンフォード)を卒業している、または有名戦略コンサル・投資銀行・PE等の出身である。これらの場合、ベンチャーで失敗した後に、高収入の職業につくことが容易。

3. 貯蓄

十分な貯金があれば、事業に失敗しても生活に困ることはありません。上記のコンサル・金融業界で若くして数千万円程度の資金を貯めるのは、一石二鳥。

4. 配偶者の稼ぐ力

配偶者が安定的に(高)収入を得ていれば、もう一人がリスクを負いやすくなります。

5. 若さ

若ければ若いほど、やり直しが利きやすいため、起業リスク耐性は高まります。学生ベンチャーはこれに当てはまり、ほとんどノーリスク。元手がほとんどかからないアプリ開発等で起業して「IT起業家」と名乗れば、(事業のレベルに関わらず)就職活動、合コン等で有利に働く。

6. 人的ネットワーク

「失敗したら俺のところで雇ってやるから」と言ってくれる人がいれば、思い切ってチャレンジできます。梯子を外されたり、その人自身が窮地に陥ってしまわないかは注意ですが。特定のコミュニティ(ベンチャー界隈等)において、何らかの分野で高く評価される存在であることも有効。

7. 実力

自分はどこでも食っていける、と信じられるスキルが、勘違いでなく身についていれば、再就職も難しくないはずです。

8. 資格

弁護士、公認会計士、医師のような独占業務資格は強力なリスクヘッジとなります。

9. 低い生活レベル

生活に必要とされる金額を低く保っておけば、起業リスク耐性は高くなります。この点で、専業主婦、子供の存在はマイナスです。もちろん人生にとっての価値は別です。


ということで、自分も起業したいという人は、成功した起業家のリスクテイクを讃えるよりも、上記の要素を参考に、自分の起業リスク耐性を高める戦略を立て、努力するのが良いのではないかというのが、今日の結論です。はい。


(注)上記は、外部から資本を調達したり、自己資金で起業するケースを想定しています。自分の資産を担保にお金を借りてハイリスクな事業を始める、という場合には当てはまりません。そのあたりでも、日本では多くの誤解があるように感じています。その辺は、まずは磯崎氏の『起業のファイナンス』を読むところから始めるのがお勧めです。

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