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起業タイミングにまつわるエトセトラ

2011年06月29日 14:14

今日の叩き台はブルームバーグ・ビジネスウィークWeb版の記事「From Startup Dreams to a Cubicle Life」です。直訳すると「起業の夢から小個室生活へ」なのですが、この小個室(Cubicle)というのはアメリカの大企業の典型的な職場で、社員ごとにパーティションで区切られた個室が与えられるところから来ています。副題が「起業を目的にMBAを取得する学生の多くが、実際に企業する前に大企業にピットストップをする」となっています。

以前にも何度か書きましたが、米国MBAはアントレプレナーシップ分野の人気が非常に高くなっており、優秀な学生ほど、大手企業への就職ではなく、起業やベンチャー企業への就職を目指すことが多くなっています。実際、この記事でもハーバードビジネススクール(HBS)の学生でベンチャーに就職する学生は、2008年に3%だったのが、わずか2年で7%に増加していることが紹介されています(HBSは1学年1000人近い大所帯なので有意な変化)。

また、Facebook創業者のザッカ―バーグや、Googleのラリー・ペイジ&サーゲイ・ブリン、グル―ポンのアンドリュー・メイソンなどが20代で大成功を収め、Zipcar、LinkedIn、Groupon、Zingaが派手なIPOを続ける中では「官僚的な大企業で下積みなんて…」と考えるのが、平均年齢27-8歳のMBA学生にとっても自然な成り行きかもしれません。

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私の通うバブソン大学は、まさにアントレプレナーシップの為の大学なので、卒業後3年以内に16%、つまり6人に1人が起業します。そもそも入学前に起業経験があったり、大学に通いながらビジネスを始めるのは特に珍しい環境ではありませんし、大学もそれを支援する仕組みを持っています。また、バブソンに限らず、多くのMBAが起業・ベンチャービジネスに力を入れていますし、積極的な起業を促しています

しかし、そういう風潮に異を唱える人もいます。先日、授業を受けた某教授もその一人。発言のいくつかを紹介すると、「フォーチュン500(注:たぶん500)企業の創業者うち75%は、大企業の元経営者」「彼らの起業時の平均年齢は34~38歳。スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、ザッカ―バーグ等は例外的な存在で、それらを基に安易に起業を煽るのは疑問だ」「起業を成功させるには2つ方法がある。一つは5回会社を潰して、次に真に生き残れる会社を創る。もう一つは大企業で様々なスキルや知識を得て、十分に準備して起業するか、だ」。

実際、記事の中で紹介されている米国出身の起業家650人以上を対象にした調査では、MBAホルダーの卒業後起業までの平均年数は13.1年となっています(修士号一般で14.7年、学士号で16.7年、博士号で20.9年)。MBA卒業の平均年齢を29歳とすると、42歳になります。

大企業も学生の「起業家志向」に対応し始めています。記事ではGEやマイクロソフトの事例が挙げられており、ベンチャーに関わるようなダイナミックで自由度の高い業務や、創造的な仕事の機会を与えることで優秀な人材の獲得を目論んでいます。そういった志向を持つ社員は3-5年といった短い勤続年数で離職してしまうリスクが高いとはいえ、それでも優秀な人材を取り込むことを優先させるという判断です。

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では、結局のところ、起業は勢いのある20代ですべきなのか、じっくり力を付けて30代・40代ですべきなのか?

当然ながら私は答えを持っておらず、ケース・バイ・ケースとしか言いようがありません。心情的にも、「やりたい時にやればいいんじゃないの?」と思います。

ただ、二つ思うことがあります。一つ目は、ブームに煽られて少しでも早く起業することを目的にしてしまう必要はないだろうということ。市場機会・ビジネスアイデア・起業チームが揃っていて、今、起業するのがベストだと心から思える場合はともかく、大企業志向に偏重した日本社会への反動で、若くしてベンチャー=クール、といった価値観が流布されたりしているのに流されるのには、ダウンサイドもあるということです。もちろん、若くして挑戦することで得難い経験ができるメリットもあるのですが。

もう一つは、急ぐ必要はないということは、20代・30代を漫然と過ごして良いという意味ではないということ。年齢が上がるにつれ、家族が増えたり、転職の幅が狭まったりして、起業やベンチャー企業に参画する経済的なハードルは上がっていきます(日本だと特に)。また、同じ能力なら、若い方が体力や柔軟性もあるし、共同経営者を探したり、ベンチャー企業に就職する上でも、年齢が若い方が相手にとってやり易いということもあるでしょう。そういった年齢と共に失うものを自覚しつつ、それを上回る能力と実績を日々積み上げていかなければ、ただの年をとったおじさん(おばさん)となるだけです。大企業病に自分自身が毒されてしまうのもリスクの一つです。10年、20年と会社の看板でのうのうと過ごしていた人が、いきなり独り立ちして成功するというのは考え難いですから。

終わりのない話なので、今日はこのあたりで。

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