2011年05月31日 17:53
MBA1年目では少なからずグループワークの機会がありました。
まず何といってもBCAP(Babson Consulting Alliance Program)という、バブソンMBAで特徴的な1年目を通じて行う企業コンサルティング。大学が選定する5~6名の固定メンバーに個室を与えられて、1年間濃密な関係を持ちます。次に、スタディグループと呼ばれる、これも大学が勝手に選んだ6名程度のメンバーによるチームで、授業のグループ課題やプレゼンはこの単位で行うことが多いです。これは半年でシャッフル。また、課外活動のグループもありました。私の場合はアジアビジネスのクラブに所属。
大学が数多くグループワークを課すのは、それがビジネスを成功させるために重要である一方、学生にとって負担になるのを知っているからです。一人でやる作業と違った能力が要求され、多くの場合ストレスになります。バックグラウンドが近かったり性格の合う、自分の心地良い仲間ではなく、コミュニケーションが難しい相手の場合は特にそうです。だから、大学は国籍も経歴も異なる様々なチームを強制的に組ませ、「快適な領域(Comfort Zone)」から学生を追い出し、困難の中で成長の機会を与えようとします(Stretch)。

[チーム作りの一環としてゲームをやったりしました]
実際、MBA1年目を終えて、いくつもの学びがありました。
その1つは、チームの推進力をいかにして得るか、という点についてです。
まず、多国籍チームをいくつか経験して、日本でチームプレーをするときに、いかに「義務感」の助けを受けていたかを実感しました。(もちろん個人差も多々ありますが、以下、あえて一般化すると)日本でチームを組むと、なんとなく進めて行っても、最低限のレベルで前に進むことはそれほど難しくなかった記憶があります。それはメンバーに「いまいち乗り気じゃないけど、とりあえず波風を立てないために、これくらいはやっておこう」という意識が強いからだと思われます。チームメンバーに迷惑をかけてはいけない、という気持ちもあります。
一方、世界中から集まった多様なチームでは、そうはいきません。取り組むメリットをメンバーが感じていなければ、アウトプットをきちんと出さないどころか、打ち合わせに集まらない、メールに返事しない等々は頻繁に起こります(繰り返しですが全員ではないです)。無償で勤労の精神を発揮するなんていうのは、日本のガラパゴス価値観だと気付かされます。ということで、モラル・義務感に頼るマネジメントは通用しません。
ではルールを定めてみたらどうか?実際に、BCAPでは、もう一人のリーダー的メンバーと協力して運営ルールを作り、全員でサインしました。明確な役割分担、打合せのルール(遅刻・ドタキャン厳禁、アジェンダ・議事録送付など)、罰則(昼食奢り等)を設け、チームの個室に貼りました。
これでチーム運営は好転したか?…最初はやや良くなりましたが、すぐに形骸化してしまいました。なぜか?
結局のところ、いくらルールなんて作っても、よほど痛みのある罰則がない限り、怒涛のように押し寄せる授業とインターン獲得面接の合間に、時間を割いてきっちり役割を果たそうとする人はむしろ少数派なのです。

[BCAPルームでプレゼンのスライドを検討]
最後に行き着いたのは、モチベーションでした。進んでやりたくなる環境を整えることでしか、プロジェクトを動かすことはできないと考えるようになりました。
少し話が横にそれますが、実際のビジネスでは金銭的なインセンティブ(報酬・ビジネス上の利益・クビ等)によって人が動くことは多いです。しかし、そういった状況においても、高いレベルのアウトプットを出すにはモチベーションが重要になってきます。MBAのグループワークはしょせんママゴトと言うこともできますが、金銭的なインセンティブや上下関係なしに人を動かす必要があるので、ある意味、実際のビジネス以上にモチベーションが重要になってきます。
本題に戻ります。では、モチベーションは何によってもたらされるか?
一つはゴールからです。つまり、プロジェクトが成功した時に得られるもの、逆に失敗した時のダメージを明確にして、成功に向かって頑張ろうという気持ちになるというものです。例えば、BCAPで頑張れば良い成績を取ることは就職に有利になるかもしれないし、顧客企業の担当者に気に入られてインターンのポジションが獲得できるかもしれない、というような話。実際のビジネスでもそうですが、リーダーはこれをメンバーに提示することが大事です。
私の感覚では、日本であれば、これでチームがけっこう動くのですが、留学中のチームではこれも長続きしないことが往々にしてありました。要はメンバーが日本人ほど粘り強くないんですね。先の目標に向かって、今からこつこつやろうとするタイプが少ない。
そこで重要になってくるのが、プロセスから来るモチベーション、と私が勝手に呼んでいるものです。平たく言うと、そのプロジェクトが楽しい、チームでいることが楽しいからやる気になる気持ちです。これが日々のチーム運営に必要な推進力を与えてくれます。
先日ブログにシリコンバレーで企業訪問したことを書きましたが、どの企業も、社員が気持ち良く働ける環境を作ることを重視していました。つまらないルールは極力少なくし、食事や運動、気分転換の場を提供し、活躍した社員には相応の報酬で報います。顧客満足と共に、従業員満足を追求して好業績を続けているZappos.comはその最たる企業です。

[Zappos本社にて。一目でレイカーズファンと分かる社員の机]
正直なところ、私はこの部分を重視するタイプではありませんでした。日本で、ある程度プロフェッショナルな組織で仕事をしていると、「楽しいとか関係なく、プロ意識を持って取り組んで当然」という意識になりがちでしたし、それでもある程度まわっていました。
しかし、今ではチームをリードしていく時には、プロセスから来るモチベーションを高いレベルで保つように意識すべしという考え方が強くなりました。国際的で多様なチームであれば、なおさらです。楽しんでアウトプットを出せる環境作り。良い意見には多少大げさでも「Great idea!」と盛り上げ、ミーティングルームにはお菓子と飲み物を欠かさず、真剣な議論の中にもユーモアを交えるように心掛けています。なんだか単なるアメリカかぶれみたいですが、表面的に真似ているのではなく、こういう風に考えた結果なのです。もう少し堅いものだと、進捗管理を可視化して、前進していることを実感しやすくする等の工夫もありますね。
もちろん日本国内で比較的同質的なチームをリードする場合でも、モチベーションが高いのはプラスに働きますし、柔軟な発想が求められるクリエイティブな仕事であれば、より一層大事なのだと思います。
長くなりましたが、以上がMBAのグループワークでの学びその1でした。他の点については、また書こうと思います。
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まず何といってもBCAP(Babson Consulting Alliance Program)という、バブソンMBAで特徴的な1年目を通じて行う企業コンサルティング。大学が選定する5~6名の固定メンバーに個室を与えられて、1年間濃密な関係を持ちます。次に、スタディグループと呼ばれる、これも大学が勝手に選んだ6名程度のメンバーによるチームで、授業のグループ課題やプレゼンはこの単位で行うことが多いです。これは半年でシャッフル。また、課外活動のグループもありました。私の場合はアジアビジネスのクラブに所属。
大学が数多くグループワークを課すのは、それがビジネスを成功させるために重要である一方、学生にとって負担になるのを知っているからです。一人でやる作業と違った能力が要求され、多くの場合ストレスになります。バックグラウンドが近かったり性格の合う、自分の心地良い仲間ではなく、コミュニケーションが難しい相手の場合は特にそうです。だから、大学は国籍も経歴も異なる様々なチームを強制的に組ませ、「快適な領域(Comfort Zone)」から学生を追い出し、困難の中で成長の機会を与えようとします(Stretch)。

[チーム作りの一環としてゲームをやったりしました]
実際、MBA1年目を終えて、いくつもの学びがありました。
その1つは、チームの推進力をいかにして得るか、という点についてです。
まず、多国籍チームをいくつか経験して、日本でチームプレーをするときに、いかに「義務感」の助けを受けていたかを実感しました。(もちろん個人差も多々ありますが、以下、あえて一般化すると)日本でチームを組むと、なんとなく進めて行っても、最低限のレベルで前に進むことはそれほど難しくなかった記憶があります。それはメンバーに「いまいち乗り気じゃないけど、とりあえず波風を立てないために、これくらいはやっておこう」という意識が強いからだと思われます。チームメンバーに迷惑をかけてはいけない、という気持ちもあります。
一方、世界中から集まった多様なチームでは、そうはいきません。取り組むメリットをメンバーが感じていなければ、アウトプットをきちんと出さないどころか、打ち合わせに集まらない、メールに返事しない等々は頻繁に起こります(繰り返しですが全員ではないです)。無償で勤労の精神を発揮するなんていうのは、日本のガラパゴス価値観だと気付かされます。ということで、モラル・義務感に頼るマネジメントは通用しません。
ではルールを定めてみたらどうか?実際に、BCAPでは、もう一人のリーダー的メンバーと協力して運営ルールを作り、全員でサインしました。明確な役割分担、打合せのルール(遅刻・ドタキャン厳禁、アジェンダ・議事録送付など)、罰則(昼食奢り等)を設け、チームの個室に貼りました。
これでチーム運営は好転したか?…最初はやや良くなりましたが、すぐに形骸化してしまいました。なぜか?
結局のところ、いくらルールなんて作っても、よほど痛みのある罰則がない限り、怒涛のように押し寄せる授業とインターン獲得面接の合間に、時間を割いてきっちり役割を果たそうとする人はむしろ少数派なのです。

[BCAPルームでプレゼンのスライドを検討]
最後に行き着いたのは、モチベーションでした。進んでやりたくなる環境を整えることでしか、プロジェクトを動かすことはできないと考えるようになりました。
少し話が横にそれますが、実際のビジネスでは金銭的なインセンティブ(報酬・ビジネス上の利益・クビ等)によって人が動くことは多いです。しかし、そういった状況においても、高いレベルのアウトプットを出すにはモチベーションが重要になってきます。MBAのグループワークはしょせんママゴトと言うこともできますが、金銭的なインセンティブや上下関係なしに人を動かす必要があるので、ある意味、実際のビジネス以上にモチベーションが重要になってきます。
本題に戻ります。では、モチベーションは何によってもたらされるか?
一つはゴールからです。つまり、プロジェクトが成功した時に得られるもの、逆に失敗した時のダメージを明確にして、成功に向かって頑張ろうという気持ちになるというものです。例えば、BCAPで頑張れば良い成績を取ることは就職に有利になるかもしれないし、顧客企業の担当者に気に入られてインターンのポジションが獲得できるかもしれない、というような話。実際のビジネスでもそうですが、リーダーはこれをメンバーに提示することが大事です。
私の感覚では、日本であれば、これでチームがけっこう動くのですが、留学中のチームではこれも長続きしないことが往々にしてありました。要はメンバーが日本人ほど粘り強くないんですね。先の目標に向かって、今からこつこつやろうとするタイプが少ない。
そこで重要になってくるのが、プロセスから来るモチベーション、と私が勝手に呼んでいるものです。平たく言うと、そのプロジェクトが楽しい、チームでいることが楽しいからやる気になる気持ちです。これが日々のチーム運営に必要な推進力を与えてくれます。
先日ブログにシリコンバレーで企業訪問したことを書きましたが、どの企業も、社員が気持ち良く働ける環境を作ることを重視していました。つまらないルールは極力少なくし、食事や運動、気分転換の場を提供し、活躍した社員には相応の報酬で報います。顧客満足と共に、従業員満足を追求して好業績を続けているZappos.comはその最たる企業です。

[Zappos本社にて。一目でレイカーズファンと分かる社員の机]
正直なところ、私はこの部分を重視するタイプではありませんでした。日本で、ある程度プロフェッショナルな組織で仕事をしていると、「楽しいとか関係なく、プロ意識を持って取り組んで当然」という意識になりがちでしたし、それでもある程度まわっていました。
しかし、今ではチームをリードしていく時には、プロセスから来るモチベーションを高いレベルで保つように意識すべしという考え方が強くなりました。国際的で多様なチームであれば、なおさらです。楽しんでアウトプットを出せる環境作り。良い意見には多少大げさでも「Great idea!」と盛り上げ、ミーティングルームにはお菓子と飲み物を欠かさず、真剣な議論の中にもユーモアを交えるように心掛けています。なんだか単なるアメリカかぶれみたいですが、表面的に真似ているのではなく、こういう風に考えた結果なのです。もう少し堅いものだと、進捗管理を可視化して、前進していることを実感しやすくする等の工夫もありますね。
もちろん日本国内で比較的同質的なチームをリードする場合でも、モチベーションが高いのはプラスに働きますし、柔軟な発想が求められるクリエイティブな仕事であれば、より一層大事なのだと思います。
長くなりましたが、以上がMBAのグループワークでの学びその1でした。他の点については、また書こうと思います。
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