--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

読書メモ:『イノベーションのジレンマ』 +スピンアウト組織に関するプチ考察

2010年12月29日 04:02

クレイトン・クリステンセン著『イノベーションのジレンマ 技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』読了。原題は「The Innovator's Dilemma」でニュアンスが若干異なります。

「破壊的イノベーション」で知られるクリステンセン教授(ハーバード・ビジネス・スクール)の代表作で、これまで中途半端に二次情報のみ齧っていたのを、やっと今回きちんと読みました。

実は今年2月にボストンを訪れた際に、少しだけ彼の講演を聞く機会がありました。直前に講演の情報を聞きつけたので、少し遅れて会場に入ると、壇上では他のスキンヘッドの方が講演を行っていました。この後、本人の話が始まるのかなと思いつつ話を聞いていると、内容的にどうもクリステンセン氏本人らしいことが分かってきました。本の背表紙にある、髪を分けた写真とあまりに印象が違ったので、別人と勘違いしてしまったのです。後になって知りましたが、彼は現在、癌に冒されていて、闘病中でした。それでも教壇に立ち、熱弁をふるう彼の姿を思い出すと、今でも胸に迫るものがあります。(HBS学生のmsueusmさんのブログに、彼の特別講義の様子が書かれています。)



前回エントリで紹介したドラッカーの『イノベーションと企業家精神』に続き、この本もページをめくるたびに深く頷く記述があるような名著なのですが、『イノベーションのジレンマ』の凄いところは、その理論や考察が全てしっかりした事例でサポートされているところです。革新的な内容なのに、かっちりと完成度が高いです。

本書は、業界をリードする優良企業が、「破壊的イノベーション」と彼が呼ぶ非連続なイノベーションになぜ対応できないのか?という問いに答えるものです。

簡単に言うと、破壊的イノベーションになるような技術は、現れた時点では、「市場性が不確かで、あったとしても大企業にとっては小規模すぎる」、「大企業にとって利益率の高い既存顧客は不要と判断する」、「シンプルで低利益率」なため、大企業は「既存技術の延長線上にある変化に対して最適された」判断により、市場参入を見送り、その隙を新興企業に突かれて敗退する、という主張です。

この主張は本書内外の様々な事例にも当てはまり、非常に説得力があります。特に、過去20年の日本企業の苦境の多くは、これですっきりと説明できてしまいます。

photo (4)
[最近は、なるべく読書メモを取るようにしてます]

内容を詳しく触れだすといくらでも長くなってしまうので、今回は、大企業が破壊的イノベーションに対応する有力な方法の一つ方法として挙げている、スピンアウト組織に絞って少し感想を書きます。

教授は、大企業の主流とは別の価値基準が必要だったり、当初の市場規模が小さすぎる場合、または別のコスト構造が必要な場合には、主流事業とは別の組織(事業部や別会社)を設立して、破壊的イノベーションに取り組ませるのが良いと主張しています。なぜならこの取組みは、既存事業とは様々な面で相容れなかったり、時には対立することがあるからです。

私もこれには賛成ですが、その際に気を付けるべきポイントが、本書ではCEOのリーダーシップの重要性くらいの記述に留まっているので、私なりにもう少し突っ込んで重要そうだと思える要素を挙げてみます。

<スピンアウト組織を成功させるための要素>

①力のある役員の支援

本書ではCEOの支援、となっており、もちろんこれは重要。しかし、このプロジェクトが特にその大企業にとっての最重要案件でない限り、CEOが日々支援し続けるのは難しい。そのため、社内で力を持った人間が担当役員などの立場となって、企業(グループ)内での資源分配や様々な協力についてバックアップし、逆風に対しては盾となることが大事だと思います。新組織は良くも悪くも「アウトロー」の立場になるため、このような存在が成功の鍵を握ります。

②柔軟な思考ができるメンバー

新しい事業に取り組むスタッフは、大企業で固まったプロセス・価値基準(または文化)に従って仕事をするだけでなく、ゼロベースで思考し、行動できる人材が好ましいです。また、仕事の領域も曖昧になるので、元の大企業での縦割り組織で働く感覚を捨てるのも重要なポイントになります。

③失敗を恐れない文化

本書でも指摘されていますが、新規事業はトライ&エラーによって形成されていきます。大企業での日常業務のような精度での事業化は不可能です。チャレンジし、学習する動きを評価し、コントロールするマネジメントが求められます。

④メンバーのコミットメント

破壊的イノベーションの種となるようなプロジェクトは、当初は大企業本体の売上に比べると取るに足らない規模で、将来性も不明なことが多いです。そのようなプロジェクトに指名されたことを、出世に悪影響と悲観したり、移籍(出向)先から元の組織に戻ることにばかり関心があるようなメンバーは、プロジェクトの成功の阻害要因となります。前向きに取り組める、モチベーションの高いメンバーを揃えることが重要です。

⑤シナジー効果を強制しない

同一企業内、またはグループ内にある新組織は、どうしても存在意義の正当化を求められます。つまり、「選択と集中」の考え方によって、「関係ないことをやっているのであれば、うちの企業(グループ)に存在する意味はないのでは?」というプレッシャーにさらされます。これを正当化するために、シナジー効果を持ち出してしまうと、新事業を構築する上での足かせとなりかねません。視野を狭めてしまう可能性もあるでしょう。破壊的イノベーションにおいては、新事業の最終的な形態は誰にも分からないので、できるだけ自由度を与える方が得策だと思います。

このあたりは、もう少し踏み込んで考えてみたいところです。(追記書きました:「2011年にB&NとANAの実例で学ぶ」

*他の留学生ブログも読んでみたい方はこちらをクリック人気ブログランキングへ


最新記事

他のMBA留学生のブログを読むなら…

アゴス・ジャパン_留学生ブログ

もし気に入ったらクリックお願いします↓

人気ブログランキングへ


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。