fc2ブログ

英語が下手でもグローバル・ビジネスはできる、は本当か?

2013年07月20日 14:05

長らく更新していなかったのだけれども、MBAを卒業して1年、アメリカで働いて1年経ったので、自分用のメモを兼ねていくつか記事を書こうと思う。

今回はベタに英語の話。

グローバル人材という言葉が日本でバズワードになったのに合わせて、メディア上で英語の話題が増えたのが米国にいる自分ですら感じられる。そういう中、「TOEIC 500点台でも英語でビジネスはできる」的な記事が、自称グローバル・ビジネス経験者によって書かれているのも目にする。大抵、記事の中身は、著者の経験上、基礎的な英語だけでもビジネスをするには十分だ、というものだ。

それって本当なんだろうか?

答えはYesでもあり、Noでもあるというのが、1年間ではあるが英語で働いてきた僕の答えだ。

例えば、僕が画期的な発見をしたノーベル賞受賞者で、招かれて外国で英語でスピーチするのであれば、英語が少々下手でも構わないだろう。聴衆はアクセントが聞き取りづらくても、単語の使い方がおかしくても、僕を責めるのではなく、それを乗り越えて僕の意図するところを汲み取ろうとするだろう。こういう場合に、高い英語力は必ずしも必要とされない。

一方で、僕が全く新しい、複雑な概念の新サービス案を米国企業に売り込みたくて、かすかなコンタクトポイントから関係を構築して、最終的に上層部を説得して多額の投資を獲得するのがミッションであれば、かなり高度な英語力がなければ、まず話にもならないだろう。

結局のところ、「ビジネスで求められる英語力」に普遍的な基準はなくて、当然ながら状況によって異なってくる。その中で、私の経験上、重要と思われるものを簡単に整理したい。


・自分の立場

一般的に、自分の立場が相手に対して優位→中立→劣位となるに従って、求められる英語力は高くなる。例えば、あるコモディティ商品・サービスを売る側は、通常、買う側より高い英語力を求められる。あるいは、売り込む場合でもその商品が差別化されていて非常に魅力的であれば、英語力不足など問題にならないこともある。

・コミュニケーションの目的

意思表示→論理的説明→説得→売り込み、の順に難易度は上がる。「こうしたい」と言うだけで良い意思表示より、筋道を立てて説明する方が当然、英語力のハードルは高い。説得となると、感情を考慮した言葉遣いも求められる。さらに売り込みとなると、より抽象的な印象をコントロールするような繊細な語彙力・言い回しが必要だ。アクセント(日本語なまり度)も印象面に影響する。

・専門性・抽象性

より専門的で、狭い分野の具体的な話であれば、そのカテゴリの用語さえ一通り覚えてしまえば、容易にコミュニケーションしやすい。

なぜこんな話を1年の振り返りとして書いているかというと、僕の仕事上、「売り手側で、説得・セールス活動を、抽象度が高い分野も含めて」することが求められていて、それを実行するのに、英語力がまだまだネックになっているからだ。説明することはできても、相手の腹にストンと落ちるような話の仕方はやはり難しい。

アメリカに行くだけで高く飛べるようにならないように、純ドメ日本人は、アメリカで働いているだけでは、このレベルの英語力は簡単には身につかない。それは、アメリカでの職業生活が長い日本人ビジネスマンでも、このレベルに達している人が決して多くないことから分かる。

語学面では、ただ漠然と、そのうち上手くなるさと考えるのはリスキーであり、計画的に英語力を向上させていく努力が必須だと身に沁みた1年だった。
スポンサーサイト



読書メモ:『挫折力』 ~MBAというままごとだからこそソフトパワーが身につく

2011年08月20日 13:30



この本の著者である元産業再生機構COOの冨山和彦氏のことを初めて知ったのは学部卒時の就職活動のときでした。当時、ODA業界とコンサルティング業界のどちらに進むか迷いながら活動していて、その中で唯一応募した日系のコンサルティング会社が、この冨山氏がボストンコンサルティンググループ(BCG)を退社して設立に関わったコーポレートディレクション(CDI)だったからです。私が応募した時にはすでに冨山氏はCEOを退任されていたので、後任CEOの方と1対1で最終面接をさせてもらうことになりました。1時間程度でしたが、ほとんどビジネスに関する話はなく、ローマ帝国の街作りについて長くお話させて頂いたのが印象に残っています。

当時、CDIはよく「BCGを脱藩した」人たちが作ったコンサルティングファームと表現されていて、「和魂洋才」といって欧米の合理的なビジネス手法と、日本の企業文化を融合させたアプローチを売りにしていました。本書でも明治維新の話が何度か引用されているところや、ビジネスにおける心理的要素を重視しているところに、当時を思い出しました。

さて、この『挫折力』ですが、良い意味で看板に偽りありです。著者も認めている通り、前半は挫折が糧になることを説く内容ですが、後半はリーダーシップ論・権力論に関する内容になっています。そして、この(書名とは外れる)後半部分が、著者の豊富な経験と深い人間への洞察に基づいた、滋養というか深みのあるメッセージとなっています。

この現場感覚あふれる洞察の数々は、著者が書いている通り、戦略コンサルティング会社で顧客経営者だけを相手に働いているだけでは、達し得なかったものです。ベンチャーへの出向や企業再生の現場で泥にまみれたからこそ分かる人間の機微がしっかりと反映されています。だから、現場側からプロジェクト推進を行ってきた私にも「腹にはまる」ところや、二歩も三歩も進んだ考え方に学ばせてもらえる部分が数多くあったのだと思います。

詳細な内容は本書を読んでいただくとして、最後にMBAブログ的に一つだけ。本書には、ビジネスにおけるパワーを大きく2つ、ハードパワー(権力=人事権・金)とソフトパワー(権威・人望)に分けて説明している部分があります。ハードパワーは、突き詰めれば権力の源泉ではあるのだが、自分にもダメージを与えかねない諸刃の剣なので使用は最小限に留め、日常はソフトパワーによってリーダーシップを発揮すべきとされています。

そのソフトパワーを身に付けるのにMBAのクラブ活動や、NPO活動でリーダーシップを発揮することは優れた機会を与えてくれると私は感じています。なぜなら、これらの活動は基本的に自発的な集団によって行われる活動であり、各メンバーは活動をやめる自由もあるし、止めても生活に困ることはありません。つまり、ビジネスでのハードパワーを奪われた状態で、ソフトパワーのみを拠り所にチームをまとめて活動を推進していかざるをえないからです。また、仕事では基本的に結果が全であり、大失敗はその後のキャリア等にも影響を与えかねないので、普段と違う実験的な取り組みは試しづらいのですが、学生やボランティア活動であれば、人に過度な迷惑をかけない範囲ではどのように動こうが自由です。

MBAは所詮「学生のままごと」という指摘は、ある意味当たっているのですが、ままごとだからこそのメリットもあるのだと思います。

オーディオブックで英語リスニング強化と読書を両立

2010年10月20日 14:51

英語力を大きくリーディング、リスニング、スピーキング、ライティングの4つに分けるとします。MBAの授業が開始して、何が一番困るかというとリスニング力が不足していることです。

リーディングやライティングの力不足は、限度はあるけれども、時間をかければある程度カバーできます。また、スピーキングもできないと困るのですが、そもそもきちんと聞き取れていないと、話す内容を考えるところまで行けません。そういう意味で、リスニング力不足が一番致命的だと思います。

MBAを受験されている方が受験されているTOEFLでいうと、ほぼ満点くらいないと、授業での議論についていくのが難しいというのが、ここまで授業を受けての肌感覚です。参考までに私のケースを(恥を忍んで)紹介すると、1年前の時点で30点中27-28点くらいでしたが、授業やグループワークでは結構苦労しています。これから受験・入学される方は、ぜひ事前のトレーニングを頑張ることをおすすめします。折角の(知的に)面白い話を聞き逃すのはもったいないですからね。

さて、そんな私がリスニング力強化の一環で行っているのが、オーディオブックを聴くことです。オーディオブックとは、市販の本の朗読を録音したものです。日本ではあまり普及していませんが、アメリカでははるかにメジャーなようです。その理由と思われるのが、車での移動、特に通勤が多いということです。運転中に読書はできませんが、空いている耳を使って本を読むというわけです。

私も自宅から大学のキャンパスまで片道20-25分かかるので、往復40-50分をオーディオブックを聴きながら運転しています。リスニングも強化できますし、MBAでは課題のリーディングだけで手一杯でそれ以外の本を読む時間を確保するのが難しくなりがちなので、少しでも課題以外の読書量を増やすという目的にもかなっています。

オーディオブックは、アマゾンなどの書店で購入してもいいのですが、Audible.comというサイトからダウンロードする形で購入すると、より安く手に入ることが多いです。月額14.95ドルで毎月1作品が購入できる(もちろん+αで購入可)契約をはじめとして、いくつかのプランがあります。継続的に聴くペースができたならお薦めです。

日本で英語を勉強している方も、TOEICで700-800点くらいあるなら、通勤時にオーディオブックを検討してみてはいかかでしょうか?通常の英語教材は内容がつまらなくて、いかにも英語の勉強となってしまいがちですが、オーディオブックなら読書として楽しみながら勉強ができます。しかも、本を持てないような混雑した路線の方でも、読書しながら通勤できます。

弱点は、本を買わないと聞き取れない部分の確認ができないことです。逆に、通勤電車で、オーディオブックと本を両方買って、片手で本の記述を追いながら、iPod等でオーディオブックを聴くという勉強法もあるでしょう。

英語の勉強がつまらない、という方はぜひお試しください。

[Delivering Happiness: A Path to Profits, Passion, and Purpose (Tony Hsieh)]

今、私が聞いている、靴の通販会社Zappos.com(現アマゾン子会社)創業者の本です。Zapposは顧客志向の経営で有名です。内容がシンプルで、英語もそれほど難しくないので、通勤リスニング向けだと思います。内容がポジティブなのも朝一で聴くにはもってこいです。

*この記事が気に入ったらクリックを人気ブログランキングへ

睡眠時間と前始末

2010年06月28日 18:00

元ライブドア社長の堀江貴文氏がtwitterで睡眠時間について発言していました。

「だって8時間寝ないと眠いし頭働かないんだもん。きついし。 QT @motomu0525 @takapon_jp 睡眠時間が勿体無いっていう意識はないんですか?」
「は?寝ないで頑張るのって意味あんの?効率悪いだけだと思うけど? QT @nagisama_kawaii 芸術家の村上隆は寝ないで頑張っている。反省せよRT @takapon_jp: なんで意外なんですか?」


彼には(方向性の賛否はさておき)睡眠時間を削ってエネルギッシュに活動しているというイメージがあるらしく、意外だという反応を示す人や、「寝ないで頑張っている」芸術家に比べて甘い、という意見(つぶやき)が交わされていました。

睡眠時間に関しては私も堀江氏に賛成で、生まれながらのショートスリーパー(ナポレオンや明石家さんま)でない限り、短い睡眠時間は起床時の生産性を低下させるので、きちんと寝ることを心掛けています。私の場合、前日と同じ頭の働きをキープするのに6時間、疲れを回復させるには7時間以上の睡眠が必要です。逆に5時間以下の睡眠しかとれなかった翌日は間違いなく頭の働きが鈍ります。

もちろん、真剣にビジネスに関わっている限り、突発的なアクシデントで寝る間も惜しんで対応しないといけないシーンを完全に回避するのはほとんど不可能です。それでも、1日ならまだしも連日、不十分な睡眠で仕事をしているようでは、アウトプットが質・量共に低下します。

そこで大事になってくるのは「前始末」だと私は考えています。イトーヨーカ堂創業者の伊藤雅俊氏がおっしゃった言葉で、事前にできる限りの計画・準備をすることで、物事を成功させ、無駄な仕事を削減できる。同じ時間を使うにせよ、何かが起こった後の対応(「後始末」)よりもずっと有意義な時間にできるという考え方で、私も心掛けています。

一方で「毎日寝る間も削って働いている」という人の中には、単に段取りができていないためにずるずると働いている、そして自分自身の生産性の低下にすら気付かなくなってしまっている…という人も少なからずいるのではないでしょうか?睡眠時間が何割か減ると、翌日のその人の脳の働きは軽い酩酊状態と同じレベルになってしまうそうです。100の生産性で800のアウトプットを出すには8時間働けばよいですが、睡眠不足で集中力が低下していて生産性が80に低下すれば10時間働く必要があります。そして残業した分、また睡眠時間が短くなって…と負のスパイラルにはまってしまいます。さらに悪いことに、本人はそれでも一生懸命やっているつもりなのでこの状態がずるずると続きやすい。

動きが後手に回るとどうしてもこのようになってしまいがちです。同じ努力でも、先手を打つのと後手に回るのとでは、成果へのレバレッジが全然違います。システム業界の人であれば「デス・マーチ(死の行進)」と呼ばれる、プロジェクトごと後手に回ってしまって、後からいくら人員を投入しても状況が改善できない、どうしようもない悲惨な状況を一度は見聞きしたり体験したことはあるでしょう。他の業界でも同じようなことはきっとあるのだと思います。

この夏から始まるバブソンのMBAプログラムも、実業務に負けず劣らずタフな内容になっているようです。真剣に学ぼうとすればするほど、時間はいくらあっても足りないと感じることだろうと予想しています。だからこそ、適正な睡眠時間と前始末を意識して2年間を過ごしたいと思っています。

資格取得のススメ

2010年06月20日 11:11

資格取得については、肯定的な人もいれば、否定的な人もいます。あまり価値を見いださない人の意見としては「資格を持っているからといって仕事ができるとは限らない」でしょうか。

確かにそれも当たっているところはありますが、それでも私は活用の仕方次第で資格取得はスキルアップに有効だと思います。私は米国公認会計士(U.S.CPA)や高度情報処理技術者の資格を取ったことがあるので、その経験を踏まえてそう考える理由を整理してみます。

cpa
[渡航準備で出てきた当時の参考書]

理由1 未知の分野を効率よく学べる
日本企業はまだまだ職種別採用でないところも多く、その結果、大学(院)卒業までに学んだことと、会社に入って担当する業務が全く関係のないことがしばしばあります。新卒でなくても異動や転職により未知の業務に取り組む場面もあるでしょう。そんな中、OJTを中心に業務を学んでいくのが基本となります。もちろんOJTでも通常は業務を行うのに「必要な」スキルは身についていきますが、それに加えて体系的な知識を学ぶことで、その業務をさらに深く理解したり、他社・他業界の人と共通の知識基盤の上で話をすることが可能になります。

それならわざわざ資格を取らなくても、本を買って勉強すれば必要な知識は身に付くという意見もあるでしょう。しかし、勉強する対象を自ら選ぶということは自分の知識の枠中で選ぶということです。それに対して、資格試験の範囲というのはその分野の専門家が集まって、身につけておくべきスキルを1セットに整理してあるのですから、これを有効活用しない手はありません。特にその分野にそれほど精通していない場合は、資格試験を使って効率的にバランスの良く知識を習得することができます。

私が新卒でODA関連企業に入社したときは、「文系採用」というだけで職種は自分で選べませんでした。配属先は海外プロジェクトの経理を扱う部署でしたが、当時は貸方・借方が左右どちらかすら知らない状態でした。実際、業務で会計の知識不足を痛感することがしばしばあり、そのときに勉強の指針としてU.S.CPAに目をつけました。当時のU.S.CPAの試験は「財務会計」「ビジネスロー」「管理会計・税務等」「監査論」の4本立てで、それらを学ぶことで1セットの知識を身につけることができ、業務の質を高めることができました。この時の知識は、職種をIT系に変えた今でもビジネスパーソンとしての基礎となっています。

理由2 対外的にスキルを示せる
よく言われる就職や転職に有利というのが本当かどうかはYESでもNOでもあると思います。実務経験のない分野で初歩的な資格を取ったとしても、それで業務ができると企業が判断してくれるかというとNOでしょう。(弁護士や(日本の)公認会計士などの独占業務は別)

それでも全く価値がないかというと、その分野に真剣に取り組む意志や、最後まで継続して努力する姿勢がアピールできるという意味では一定の効果があると思います。また、実務経験がある分野でも、その知識レベルを証明しておく手段としても有効です。例えば「経理実務経験2年」といっても、人によってレベルは大きく異なります。そこで資格を取っておくと、完全ではないにせよ、一種の品質保証的な役割を果たしてくれるという面があります。

これは転職だけでなく、社内の異動や、独立した時でも同様です。

理由3 モチベーションアップ、ペースメーカーになる
勉強が好きでたまらない人は別として、継続的に自己研鑽を続けるのはなかなか難しいです。特に忙しいビジネスパーソンほどそうでしょう。

そんな時、資格試験の日程から逆算したスケジュール表は、ほどよい緊張感を与えてくれます。そのためには、「いつか受かりたい」ではなく、自分で期限を設定して取り組むのが効果的です。

私も社会人1-2年目はそれなりに遅くまで残業することが多かったですが、それでも資格を軸に勉強を続けました。夜9時まで仕事をして、10時に自宅(寮)のある駅に到着、そのあと駅前のドーナツ店に入って0時まで2時間勉強する、あるいは寮で2時間の学習ビデオを見るというのがよくあるパターンでした。(余談ですが、眠気覚ましに当時は好きでなかったコーヒーをあえて何杯も飲んでいたため、1年後にはすっかりコーヒー派になっていました)

私を含め、意志が強くない人ほど、自動的にプレッシャーをかけてくれる仕掛けを用意しておくのは有効だと思います。

以上のように、資格は絶対視しないで、ツールとしてうまく使いこなす、というのが私が考える資格活用法です。

*この記事が気に入ったらクリックを人気ブログランキングへ


最新記事

他のMBA留学生のブログを読むなら…

アゴス・ジャパン_留学生ブログ

もし気に入ったらクリックお願いします↓

人気ブログランキングへ