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読書メモ:『経営パワーの危機 会社再建の企業変革ドラマ』

2011年05月21日 00:05

元ボストンコンサルティンググループの企業再生スペシャリストで、現ミスミCEOの三枝匡氏の『経営パワーの危機』を読みました。知人に勧められて読んだのですが、三枝氏の過去のプロジェクトをベースにした小説仕立てで読み易い一方で中身は骨太な良書で、勉強になりました。



物語はある30代後半の大手企業社員が、投資先の不振企業に社長として就任し、企業再建を行うというストーリーです。企業再建をもう一段階ブレイクダウンすると、応急処置(赤字ストップ)→成長戦略の立案・実施→急成長企業のマネジメントとなり、それぞれのステージで現れる課題や、それに対する三枝氏の考え方が示されています。

以下、印象に残った点をいくつか。

・機能別組織に閉じた仕事をしている限り、経営力を身に付けるのは難しい。小さい組織でも良いので、30代~40代で全ての機能を見渡し経営責任を負う立場を担うのが重要

大企業には機能別組織(営業部、技術部、販促部等)は向いておらず、自律的で戦略的起業家精神を持った企業活動を行うには子会社化するか、事業部制・カンパニー制のような疑似的に小規模な企業を作る必要がある。しかし、多くの日本には機能別組織のままの大企業が数多くみられる(本が書かれた1994年当時)。そして、機能別組織の中だけで新卒から20年以上働いてきた社員には、経営力を身に付ける機会が乏しく、それが日本企業が経営力のある人材を育てるのを妨げてきた、というのが三枝氏の分析です。

私も確かにその通りで、将来的に経営の仕事をするのであれば、若いうちから経営陣の近くで働き、実際にその立場に立つ経験が重要だと感じています。大企業の本体でそのような機会を得るのは難しいので、現実的には小規模企業や、大企業の中の小さな新規事業がそのような場になります。

この小説では、大企業の社長が経営人材を育てるために、若手幹部候補生を戦略子会社に経営ポジションで出向させたり、社内の事業を担当させたりします。経営力をつけたい若手は、そのような機会を掴みとるか、自分でそのようなポジションに向けて移動するのが大事なのだと思います。逆に大企業でエリート・花形と言われている部門であっても、単一機能を担っているだけの部門であれば、経営力をつけるのは難しいということです。

・戦略的経営と社員心理のバランスが成功のキー

多くの日本企業に欠けているのは戦略的思考とそれに則った行動です。特にターンアラウンドや企業変革の場面では、「浪花節的」人材ではなく、戦略的思考を重視するタイプの人材が向いていると三枝氏は指摘しています。

一方で、社員は人間であり、論理だけで動くものではないのも事実です。三枝氏は抱負なコンサルティング経験に基づいて、この本で経営の各ステージにおける関係者の心理の変化をきめ細かく描写、解説しています。

単に経営戦略の立案の仕方やフレームワークだけではなく、組織心理と戦略の微妙なバランスがリアリティを持って描かれていることが、この本を他の平凡なビジネス書より深みのあるものとしています。

....
文庫本で約500ページとやや分厚い本ですが、読み易い上に内容が濃いのでおすすめです。1994年の本でやや時代を感じさせる部分はあるものの、本質的には今でも十分通用する内容です。今でも通用してしまうこと自体が、日本の失われた20年を裏付けているともいえるのですが。
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分析か直感か。それが問題だ。

2010年05月30日 18:51

『分析力を武器とする企業』を読了。

バブソン大学のトーマス・H・ダベンポート教授が著者ということで、既に読んでいた上司が受験の参考にと貸してくださった本。タイトルの通り(原題も『Competing on Analytics』)、企業活動において分析を有効に行って行動に結びつけることの重要性を指摘し、実際に先進的な取り組みを行っている企業の豊富な事例を挙げている良書でした。分析を題材にした本というと統計や数学が頭をよぎって敷居が高そうに感じる人も多いかもしれないですが、この本は分析をいかに活用するかということについて書かれた本で、しかも豊富な事例と読みやすい翻訳のおかげでとても読みやすい内容になっているのでそういう方にもおすすめです。

ダベンポート教授は今日の複雑なビジネス環境の下でより良い判断を行っていくためには、勘に頼るのではなく、データを分析し、それに基づいてビジネスを行うことが重要だと本の中で繰り返し説いています。分析の最大の敵は直感である、という立場です。

一方で、元米国アップル副社長で日本法人社長、現日本マクドナルドCEOの原田泳幸氏は著書『とことんやれば必ずできる』の中で、「戦略は市場調査よりもひらめきで立てる」と書いています。データは、ひらめきで立てた戦略が正しいかどうかを判断するために用いるとしています。原田氏は多くの方がご存じの通り、アップル、マクドナルド(Wマック!)で立て続けに成功を収めてきた経営者です。そういう方がひらめき重視というのが意外でした。

ただ、一見、正反対のことを述べているようですが、原田氏の本意は、誰でも手に入るような市場調査を元に薄っぺらい戦略を立てることの愚を指摘していると読めました。市場調査という(ともすると)安易な手段でなく、日頃からの観察に基づいてユニークなアイデアを生み出すことが大事だということだと思います。ダベンポート教授もそういう安易な分析を奨励しているわけではなく、データの中からそこに隠された意味やビジネスチャンスを見つけ出す高度な作業(それはしばしば数学や統計の専門家が直接行ったり指導したりする)が強い競争力を生み出すと考えているので、根本的には二人の立場に違いはないのでしょう。

分析か直感か。分析力を駆使して成功を収める企業が増える中、現在飛ぶ鳥を落とす勢いのアップルのスティーブ・ジョブズは直感派の代表例です。この古くて新しい問題、読んでくださったあなたはどのように考えますか?


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