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読書メモ:『ストーリーとしての競争戦略』 ~「私と戦略論」

2012年12月27日 17:10




MBAの(経営)戦略論で習うことは、以下の3つに分類されるのではないか。

a) 戦略論の代表的理論(差別化戦略など)
b) 戦略策定に有用なフレームワーク(5フォース、バリューチェーンなど)
c) 実際の企業への適用(ケーススタディ)

僕の場合、戦略論を学び始めた頃は新しい概念に興奮したものの、その後はどうにも「地に足の付かない」感覚を覚えた。経営戦略という、ものすごく多くの要素・変数を含んだ分野に対して、「理論」がどれだけ後知恵でない助けになるのか、という部分に確信を持てなかったのが原因だった。

今の私は、「戦略論というのはあくまでアートであって、それを学ぶことは、例えるなら料理学校に通うようなもの」というスタンスだ。

料理学校では、代表的な料理の分野・種類や、食材の使い方・包丁の使い方・調味料の選び方を学ぶ。そして、実際に料理を作ってみる。

料理の鉄人的に、テーマや食材が与えられて、それでベストの料理を創り出せというお題があったとする。

料理学校で習ったことは、素晴らしい料理が必ず作れることを担保しない。テーマや食材は無限に存在するから。その料理を食べる人の好みも。つまり、この本の著者も書いているが、戦略論は、それを当てはめれば自動的に理想的な経営戦略が導き出せるような力を持っていない。これはMBAでも常識である。コンテクスト、つまりその特定の企業とそれを取り巻く環境がどうであるか、という一般化できない情報が重要だからだ。(*1)

一方、では、世界の料理に関する知識や様々な調理法を習得していることが役に立たないかというと、もちろん、そんなことはない。枠にとらわれてしまうリスクはあるにせよ、多くの場合は料理の質を高める役割を果たすだろう。同様に、戦略論は、勘だけに頼ることなく、より確かな企業戦略を構想し実践する上で、大いに参考になると私は確信している。

そこで大事なのは戦略論の自分なりの位置づけ方なのだと思う。自分の資質や能力、課題の質などにより、最適な戦略論の活用法は変わってくる。

本書では、著者なりの枠組みが示されている。それも良質の。これを採用するかしないかは読者次第だ。ただ、繰り返すと、戦略論については、「自分なりのスタンス・型を持つ」ことが、重要だ。そういう意味で、ベースとする枠組みを探すにあたって、一つのオプションとして読むにはお勧めの本である。

私にとっては、内容や事例がMBAで学んだことと重複している部分が多く、少々冗長に感じた。MBAに入学する前に読みたかったかな。

(*1)「フレームワークを当てはめるだけのMBA的なやり方は…」というような文章を巷で見かけるが、そういう人のほとんどが経営学者やビジネススクールの戦略論に対する謙虚な姿勢を分かっていない(のに分かった風な事を書く恥ずかしい人である)。ま、そういうレベルの仕事をするコンサルも確かに存在するのだろう。
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『銃・病原菌・鉄』 ~MBAではスキルアップより環境目利き力?

2012年12月13日 12:43

『銃・病原菌・鉄』を読んだ。少なくとも自分にとっては数年に一冊あるかないかの強いインパクトを受けた本だった。特に上巻。そういえば、あの、やまもといちろうメルマガでも上巻を強調してお勧めされてた。



すごく大雑把にいうと、本書の主張は「現代においてヨーロッパ系人種が世界を支配しているのは、彼らが他の民族より優秀だったからではなく、地理的な要因、特にユーラシア大陸のサイズ・東西に長い形状・地形・動植物の分布、が主な理由」である。

一万三千年という長い年月でマクロ単位で見れば、社会の発展度合いに決定的な差異をもたらすのは「環境の違い>人(民族)の違い」ということだ。

これを個人レベルに落としこんでみる。少々乱暴な話ではあるが、まんざら間違ってるわけでもないように思える。

このブログのテーマであるMBAに関心がある人は、自分のスキルアップという「人」に焦点を当てた目標設定が主になっていることが多い(はず)。しかし、1万年前の民族ではない、現代の私たちは、職種・企業・業界・市場といった「環境」をある程度、自分で選ぶことができる。環境自体が下り坂の時に、中からそれに抗うのがとても難しいことは、歴史が物語っているのだから、適切な環境を選ぶ力を身に付けることが大事なはずである。知っているオプションの数を増やす、目利き力を磨く、目的の環境に辿り着く力をつける等。僕がこの本をMBA入学前に読んでいたら、「人」と「環境」の視点でも目標設定・時間配分をしていたかもしれない。

…というようなことをはじめ、多くの示唆に富む考察が含まれているので、未読の人には正月休みの一冊(上下巻なので二冊だけど)としてお勧めの本である。

(おまけ)最近、複数の著名人が、経済的な差異を単純に努力(本人)の問題であるかのような発言をして、ツイッター上で批判を浴びていた。彼らがこの本のような視点を持っていれば、もう少し奥行きのある思考ができたかもしれない。

再スタート

2012年12月13日 03:58

ビジネススクールを卒業して半年が経った。前のエントリで書いたとおり、学生から社会人に立場を変えて、米国に残って働いている。

このブログは卒業で終わり、とする予定だったけれど、時折メモ書きのような文章を自分のためにも残したい気分になるので、不定期に記事を書いてみることにした。

もうMBA生活の紹介という内容でもなくなるので、簡潔な文体にして、こっそり再スタートしてみる。

アメリカの空気を吸うだけで…

2012年05月04日 11:13

タイトルは、漫画スラムダンクの名台詞「バスケットの国アメリカの空気を吸うだけで僕は高く跳べると思っていたのかなぁ・・・」から。(ご存じない方はこちらをどうぞ

ふとしたきっかけでこの言葉を思い出したので、(ウィスキー片手に)だらだら書いてみます。

留学に関してありがちな勘違いの一つが、「留学しさえすれば英語がペラペラになる」というもの。

実際には、そんなことはなくて、私のような純ドメ日本人が30歳を超えて留学しても、ネイティブのような話し方にはまずなりません。むしろ、ジャパニーズアクセントを残しつつスムーズにコミュニケーションできるようになるだけでも、相当な努力が必要です。もちろん日本で英語を全く使わない環境の人に比べれば、英語を磨く上では遥かに恵まれた環境ですが、自然と話せるようになるなんてことはないです。残念ながら。

また、卒業も間近となって、この言葉は、ビジネススクールという意味でもいろいろと連想させてくれます。

アメリカのMBAに来て、自分なりに精一杯、勉強もそれ以外でも最大限吸収しようとしてきたので、私もそれなりに成長した感覚があります。日本人の海外MBA取得者が年間数百人(しかも前半)しかいないことを考えると、少し特別なことを習得してきたような気持ちも、全くないと言えば嘘になります。

しかし、一方で、その2年間を日本で、ビジネスの最前線で奮闘してきた同世代の友人達がいます。30代ともなると、人によっては責任も大きくなり、相当なスピードで成長しているはずです。(実際、ちょこちょこ聞こえてくる)

それを想像すると、長く現場を離れてきたことのマイナス面も感じますし、少なくとも「MBAでござい」的に振る舞おうなんて露にも思えない。成長のベクトルでいけば、向きはともかく、優秀で意欲的な人はどこにいても長さは伸ばしているでしょうから。

私は卒業後もアメリカに残ることになっているので、ベクトルの向きは、日本にいる多くの友人と自然とある程度異なってくるとは思います。しかし、そのベクトルの伸びはどうなんだ、というのを常に意識していたいな、と。他人と比べるのが大事という意味でなく、違っているというだけで、変な満足感を抱いたり、緊張感を失うことを戒める意味で。

なんとなくタイトルからズレてしまったような気もしますが、連想ゲームみたいなものということでお許しを。

ボストンMBA生のためのレッドソックス観戦ガイド@フェンウェイパーク (4)豆知識編

2012年04月25日 04:49

最後に、スムーズで楽しいフェンウェイ野球観戦にするための豆知識をざっと。

・遅くとも30分前に到着するスケジュールで

試合開始の10分ほど前には選手紹介や国歌斉唱が始まります。ここは試合に劣らないくらい雰囲気があって盛り上がるところなので、それまでに着席することをおすすめします。球場入口・通路の混雑、観戦前の食べ物・飲み物の購入に並ぶ時間、お手洗い等を考えると、試合前にグッズ購入をしない場合でも30分前を目処に到着しておきたいです。なお、グッズは試合終了後も購入可能です。

・交通手段

ボストンの地下鉄(中心部以外は地上も走る)通称"T"では、Kenmore駅とFenway駅の両方から球場までは同じくらいの距離ですので、どちらの駅を使ってもOKです。

車で行く場合は、駐車料金として25~40ドル程度は覚悟してください。下のガソリンスタンドは、試合日だけは敷地を駐車場として使ってしまうというワイルドな方式です。駐車場は球場周辺にたくさんあります。

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・腹ごしらえ

球場内でホットドッグ等を食べるのも良いですが、周辺の店で軽く食べてビールを飲んでから入場するファンも多いです。球場周辺にはスポーツバーがたくさんあるので、そこに入ってもよし、あるいは駅からは反対方面になりますが、Tasty Burgerも人気スポットです。スポーツバーJerry Remy'sは元レッドソックス選手で現解説者がオーナーのお店です。少し方向性を変えて、創作ジャパニーズのBashoもいいですね。

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・持ち物

カバンは手提げ程度までの大きさが公式には認められていますが(ウェブサイトで確認してください)、実際にはあまり気にしていない様子。一方で、PCの持ち込みは厳しく制限されているので、ご注意ください。封の開いた飲み物も持ち込めません。

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・服装

フェンウェイのファンは、日本より遥かに高い率でレッドソックスのユニフォームやTシャツ、帽子を着用して観戦しています。

4月や9月以降は冷えることが多いです。席によっては風も強く、体感温度がかなり低くなることが多いので、厚めの上着を持って行くことを強くおすすめします(私も一度、凍えたことがあります)。

・出待ち

試合後にDゲート近くで待っていると、選手が帰る姿が観られます。高級車で帰る選手、ベビーカーを押しながら家族と歩いて帰る選手などいろいろです。ハードコアなファンの方はどうぞ。

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野球ファンもそうでない方も、楽しめる球場だと思います。ボストンに住むことになったのであれば、ぜひ一度は訪れてみてはいかがでしょうか?

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