2012年02月09日 02:37
私はCrush Courseという体験プログラムに参加したのですが、スタッフの方に聞いたところ、定員がなんと160名とのこと。実際に参加者は軽く100名を超えていました。デザイン思考の人気ぶりをいうか、ブームを肌で感じました。米国の先端的なMBAではデザイン思考を取り入れているところも珍しくなくなっているようですし(バブソンの例)、日本でもワークショップや、関連したコンサルティングが増えているようです。
その熱気の中にいて「これって何かに似てるなぁ」と感じたわけです。
あとで気付いたのですが、似ていると思ったのは社会開発でした。社会開発、といっても曖昧な言葉なのですが、この言葉の一つの使い方は、「途上国の発展を考える上で経済的側面だけでなく、社会環境もきちんと考慮しよう」という開発学(Development Studies)における一つの潮流・領域を指します。具体的には、貧困、環境、ジェンダー、教育、保健などの分野が当てはまります。UNDP等の国際機関の後押しもあって1990年代にはかなり注目を浴びるようになっており、私の学部時代の専攻もこの分野でした。当時は比較的新しい分野でしたので、社会人と学生が混じっての勉強会やワークショップが盛んに行われていました。
[ロバート・チェンバース教授は私の学部時代のヒーローでした]
当時、社会開発は経済開発、つまりインフラ主体の援助に対するアンチテーゼとして多くの人に注目され、その筋の学生に人気の分野になっていました。
そして、多くの学生がその分野の専門家として将来開発援助に関わっていきたいと考えていましたが、私の周囲を見る限り、実際に実現したのはごく一握りだったようです。
その理由の一つは、社会開発が、主流の経済開発に対するアンチテーゼではなく、補完関係にあったからだと思います。つまり、職という意味合いでは、社会開発の専門家に対する需要は少数でしかなく、主に求められていたのは、経済開発を行っている多数派の人達が社会的側面を理解して仕事を行うことだったということです。例えば、ダムの建設計画を立てる人が、環境や地元住民への影響をきちんと考慮するようになることが主な需要であって、環境の専門家や、コミュニティの専門家が大量に雇用されるというわけではなかったということです。少なくともその職を求める人の数よりはずっと少なかった。
話をデザイン思考に戻します。
ビジネスを中心に話をすると、デザイン思考は、従来のロジックやマーケットリサーチ主体のアプローチに対するアンチテーゼのような扱いを受けているように感じることがあります。しかし、―社会開発と同様― それは従来のビジネスのやり方と補完関係にあり、メインストリームのビジネス人材がその思想(とフレームワーク・ツール群)を理解し、取り入れてレベルアップすることが大事なのだと思います。一方、「これからはデザイン思考だ!」と目を輝かせても、それ自体を仕事とする人は少数に留まるのでしょう。
そういった意味で、d.schoolのアプローチはその辺をよく分かっていると思います。d.schoolはそれ自体に学生を抱えるのではなく、スタンフォードで他の分野を学ぶ学生にデザイン思考を広めるという役割に専念しているからです。
今日は「d.school 入学」等の検索キーワードでブログに来てくれる方々が読んでくれたらなぁ、と思って書いてみました。
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