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Data Scientist is not sexy and I know it.

2013年08月15日 13:29

データサイエンティストという言葉がハイプカーブの頂点にいるようだ。「21世紀で最もセクシーな職業」なんていう呼ばれ方もしているらしい。IT業界の悪癖で、これに当て込んで効果が怪しげな研修やセミナーも目白押しなのが、海外にいても聞こえてくる。

では、そうやって煽っている人達が言うとおり、データサイエンティストという肩書きを持った専門家がこれからビジネスの現場を闊歩していくかというと、僕はかなり懐疑的である。

データサイエンティストや、それが注目されるきっかけとなったビッグデータのハイプは、これらの概念がまだ新しくて、一部の人を除いてよく分からないという現状が支えている。つまり、今後、大量の非構造化データの扱い方や、その分析手法と使いやすいUIが整備されるにつれ、秘密のベールは少しずつベールを脱いで、熱狂の後の落胆の谷を経て、定着していくことだろう。

そうなった時に、企業においてデータの分析を行う主体となるのは、データサイエンティストという専門家というより、いわゆる現場の人間なのではないか。なぜなら、データ分析において最も代替困難で付加価値があるのは、ビジネスの文脈だからだ。

統計学、分析手法、それを支えるシステムの知識は大事だ。ただし、それらはあくまで付随的なものであって、そこそこの数の人間が学び始めればコモディティと化しやすい。ITの進化もそれを後押しする。

よって、僕としては数年後には、ビジネスの人間がそれらの必要な知識を学ぶのが大事、というところに話が落ち着くと思っている。以前にもこのブログで書いたが、同じく流行りのデザイン思考にも同じ事が言えるはずだ。

さて、このエントリーが先見の明のなさを露呈した恥ずかしい記録となっているのかどうか、数年後に忘れず振り返ってみたいものだ。
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小売業は終着駅に到着、折り返し運転に ~戦後小売業の歴史とモバイルコマース

2012年02月03日 15:49

システム屋として小売業を担当するようになった頃、誰からか忘れてしまいましたが、こんな話を聞きました。

「戦後小売業の歴史は、顧客に近づいて行く歴史である」

つまり、こういう事です。

最初は百貨店の時代がありました。消費者は持っている中で一番オシャレな服を着て電車に乗って大都市中心部の百貨店に行き、買い物を楽しみ、食堂で食事をして帰ってきました。小売業の王者は百貨店でした。

次にスーパーの時代が来ました。生活圏の街に一通りのものが揃う総合小売店が現れました。ダイエーを先頭に、顧客重視で、良いものを安く、のビジネスが支持され、消費の主役となりました。

続いたのはコンビニの時代です。家や職場の近所、徒歩圏内に24時間営業の店舗が次々とオープンしていきました。価格はスーパーより高いものの、忙しくなる一方の現代人に支持されました。

確かにそうだな、と感心したのを覚えています。そして時代はさらに進みます。

インターネット・ITの進化によりネットショッピングの時代が来ました。消費者は、自宅から商品を注文し、数日後に宅配を受け取るようになりました。その宅配にかかる時間はネットスーパーでは数時間にまで短縮されるようになりました。

そして現在。米国小売業の注目の的はモバイルです。とうとう消費者は、常に持ち歩く携帯電話からほとんどの物を買えるようになりました。

小売業の場所:
大都市(百貨店)→生活圏の街(スーパー)→自宅やオフィスの徒歩圏内(コンビニ)→自宅(ネットショッピング)→手の平の中(モバイル)


小売業の主役が少しずつ消費者寄りに移動してきた歴史は今、一つの転換期を迎えています。とうとう究極に近い、消費者の手の平まで到達したからです。

今、小売企業はモバイルをフロンティアとしつつ、その次のビジネスモデルを模索しています。「先」はもうないので「次」です。発想の転換が必要です。ソーシャルは有力なキーワードですが、まだ試行錯誤の只中です。多様化する顧客との接点を一連のエクスペリエンスとして捉えて、それを取り巻くエコシステムを理解し、うまく活用していこうという流れもあります。

小売に関わる者にとっては、大変ですが面白い時代が来ているのだと思います。

アメリカ版外食デフレ ~苦戦するファミレスと躍進する新型ファストフードチェーン(Chipotle、FiveGuys、Smashburger)

2012年01月03日 06:03

先学期に履修したターンアラウンド(企業再生)の授業では、ちょうど(?)破産法11条を申請した米ファミリーレストラン&アイスクリームチェーンのFriendly'sの再生プランをプレゼンする機会がありました。

その際に、アメリカの外食産業も日本と似た状況になってきているということを知りました。例えば、少しデータが古いのですが、2006年から2009年にかけて、内食(家庭内での食費)は1.6%減だったのですが、外食費は12.6%の大幅減となっています。ここから外食を減らして家計防衛に向かっている様が見て取れます。

また、外食の中でもファミリーレストランのような「親子4人で出かけて40-50ドル」といった中間的なレストランは苦戦しており、Friendly'sをはじめ、今年に入っていくつものチェーンが倒産しています。

一方、そんな厳しい状況の中でも元気な企業はあります。先のファミリーレストランチェーンより安く手軽な、ファストフード店です。経済的な余裕が失われた層が、こちらを選ぶようになりました。チップ(約18%)を払う必要がないのも大きいです。日本でファミレスが長期に渡って苦戦し、反対に牛丼チェーンやマクドナルドがデフレに強い業態と注目を浴びたのと同じ構図です。

正直、アメリカのマクドナルド等は、立地によっては荒んだ雰囲気の店も少なくありません。また安いファストフードに頼る貧困層の肥満を助長しているという批判がありますが、それをリアルに目にすることになります。

しかし、成長著しい新興のチェーンは、マクドナルドやバーガーキングといった既存ファストフードとは「店舗のオシャレ度」「強い個性」といった店で異なっており、大手チェーンに少なからずつきまとう負のイメージを感じることなく食事を楽しめるので、私もファンになっています。

ここから簡単に雰囲気を紹介したいと思います。

1.Chipotle

ブリトーなどメキシコ料理のファストフード店。
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ボストン大学横の店舗に、学生がほとんどいない年末に行ったため、ガラガラでした。カウンターでブリトーやタコス等の形態を選び、その後、目の前にある具材から店員さんに好きなものを指定して作ってもらう方式。日本だとサブウェイのイメージ。7ドル弱から。
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ブリトー。
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でかいです。前回行ったときより、相当大きかったような(笑) その辺はアメリカ流に適当か。
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入っているのは、チキン、黒豆、アボカド、レタス、サワークリームあたり。
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2.Five Guys

人気ハンバーガーチェーン。ワシントンDCのローカルチェーンとして15年ほど経営した後、拡大路線に。現在900店舗で、新たに1500店舗(!)をオープン準備中。

ハンバーガーは、肉が少ないリトルサイズが3ドル半ば~5ドル強、通常サイズが5ドル強~6ドル半ば。特徴として、15種類のトッピングから追加料金なしで自由に選べて、20万通り以上の組合わせから自分の好みのハンバーガーを作ることができます。
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オーダーしてから作りはじめるので、待ってる間にピーナッツが食べ放題。このあたりもポイント。
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袋の中にハンバーガーを入れて、その後、ポテトを豪快にぶち込む。
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ハンバーガー発見。
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アルミホイルでくしゃっと包まれています。
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ジューシーで旨かったです。
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おまけ。タッチスクリーン操作のソフトドリンク・サーバー。初めて見ました。知人によると、どの店にでもあるわけではないそうです。
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3.SmashBurger

最後にSmashburger。実はマサチューセッツ州には出店していないので、私はまだ行ったことがありません。店名の由来は、肉を焼く際にグリルに叩きつける(Smash)ところから。創業は2007年と新しいのですが、僅か2年後の2009年にプライベートエクイティから15億ドルの出資を受けて、急速拡大中。現在百数十店舗。なんとフォーブス誌が選ぶ全米の最も期待されている非公開企業ランキング1位です。

味に定評があり、各地のハンバーガーランキングで上位に入っています。また、HPで確認する限り、この店舗も内装がカッコいい。近々、訪れてみたいと思っています。
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アメリカの外食は残念な料理も多いですが、本場のハンバーガーは流石に日本を大きく上回る美味しさです。外すことも少ない(不味くしようもない?)ので、重宝しています。

読書メモ:『ソニーとSONY』 ~出井時代の経営内幕

2011年12月28日 11:35

MBAの授業では積極的な発言が求められ、実際に成績の1/3程度がクラス貢献度によるものです(バブソンの場合)。とはいえ、英語力がいまいちな純ドメ日本人学生の場合、ネイティブが活発に議論する中でそこに入るのは容易ではありません。

そんな中でも、日本企業ネタ(ケーススタディ)は日本人が自然と知識面で優位であり、さらには教授や他の学生から意見を求められたりと、絶好のセンタリングが上がった状態になります。ここで取りこぼすという、柳沢QBK的事態は避けたいところです。



ということで、MBA留学する人には、取り上げられやすい日本企業について事前にある程度予習をしておくことをお勧めします。授業前日にネットで検索するというのもありですが、現在50-60歳代くらいの主力教授陣は、ジャパン・アズ・ナンバーワン時代に研究実績を積み重ねてきた人達だからか、日本企業についても詳しい人が多く、軽くさらった程度の知識だと議論の前提となってしまって撃沈する可能性があるので要注意です。

前置きが長くなりましたが、『ソニーとSONY』は私が留学準備として駆け込み購入して持ってきた本の一冊です。



この本は、ソニー前CEOの出井伸之氏の就任時代(1995-)から、現CEOのハワード・ストリンガー体制のスタート(2005)までを主に扱った本です。日本経済新聞が編集しているだけあって、丹念な取材に基づいて、ソニーの文化や、経営陣の人間模様を描いています。

一方で、「ソニー凋落の始まりともいえる出井体制後期において、なぜエレクトロニクス事業が失速したのか?」といった重要な問題への記述・洞察がほとんどなく、経営陣の描写のみに終始している本でもありますので、MBA留学生だけでなくビジネスパーソン向けとしても、正直あまりお薦めできないという評価に落ち着いてしまいます。

※その出井氏著自身の著作はこちら。正直なところ私は彼がなぜ失敗したのか、本質的な考察ができていません。手がかりとなる良書をご存知の方がいらしたら、ぜひ教えてください。この中で唯一未読の『迷いと決断』は読んでみようかと思ってます。

    


読書メモ:『最前線のリーダーシップ』 ~リーダーの本ではなくリーダーシップの本

2011年11月23日 12:42

かなりの良書でした。自信を持ってお薦めです。

『最前線のリーダーシップ』(ロナルド・A・ハイフェッツ、マーティ・リンスキー著)
  

仕事のこと、家庭のこと、国家のこと、地域社会のこと、様々な場面で毎日のように人にはリーダーシップを発揮する機会がある。「重要な疑問を提起し、より高い価値観に訴え、未解決の問題を表面化させ」、良いと信じる方向への変化をもたらすための行動を起こす機会がある。成功すれば、周囲の人たちに幸福をもたらし、自分の人生にも意味を与えられる経験となる。しかし、そういうリーダーシップは本質的に危険な仕事であり、周囲の抵抗により自分が不利益を被るリスクを背負った行動である、というのが著者の立場です。

その上で、「①なぜ、どのようにリーダーシップは危険なのか」「②それらの危険にどう対応すればよいのか」「③困難な状況の中で心の活力を保つにはどうすればよいか」という3つのテーマについて、心に響く具体例を豊富に交えながら論じ、リーダーシップを取ろうとする人達のサポートをするために書かれた本です。

これだけ書いてしまうと、書店の自己啓発本コーナーに並ぶ幾多の本と同じように聞こえてしまうかもしれませんが、洞察の鋭さ、論理性、そして人間は本質的に弱いという認識に立った温かく現実的なアプローチなど、明らかに違うレベルにある本です。それでいて文章は難しくなく、実際の行動に活かせるように書かれています。

私も元々、多くの人の感情に配慮して、政治的・戦略的に行動するというのは、あまり得意な方ではありません。それよりも「あるべき姿(と自分が考えるもの)」に向かって一直線に走るタイプで、法人顧客向けの仕事なのに「武闘派w」などという呼ばれ方をしたことも随分前にありました(苦笑)。

そんな私も、よりアウトプットを出せる動き方をする上司や同僚に恵まれて少しずつ学び、MBAでも多様なメンバーをリードする役割を意識して買って出たりして、試行錯誤しながらリーダーシップ(力)を高めるよう努力しています。そんな中で読んだ本ですので、日頃感じていることが言語化され、さらに一歩も二歩も先まで見通してアドバイスを貰っている気分でした。

ところで、この本は「リーダーシップ」の本であって、「リーダー」のための本ではありません。本の中でもリーダーという言葉はほとんど出てきません。それは、リーダーシップは規模の大小あれ、ほとんどの人が日々発揮できる行為だという考え方からです。人を率いているからリーダーシップというわけではない、というのはまさにその通りだと思います。人を率いていてもリスクを取って何かを変えなければ、リーダーシップではないのです。そういう風に考えると、良かれ悪しかれ、いろんな人の顔が浮かんで来たりしますね。

※日本語版の翻訳チームには知人が数名。これも素晴らしいリーダーシップ。


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